利用可能な 重イオンビーム
加速器施設の説明 をご参照ください。
核種 | 真空中 エネルギー [MeV/u] |
空気中 最大エネルギー [MeV/u] |
実験施設構成 (加速器の組合せ) |
Si材中 最大飛程 [μm] |
LET範囲 [MeV/ (mg/cm2)] |
40Ar | 95 | 〜83 | AVF+RRC | 〜3,700 | 2.2〜18.7 |
84Kr | 70 | 〜53 | AVF+RRC | 〜1,060 | 11.4〜41.0 |
129Xe | 36 | 〜20 | AVF+RRC | 〜 210 | 43.5〜69.4 |
136Xe | 10.75 (*1) | 〜 5.3 | RILAC2+RRC | 〜 50 | 69近傍のみ |
12C | 135(*2) | 〜132 | AVF+RRC | 〜23,100 | 0.2〜5.1 |
20Ne | 135(*2) | 〜129 | AVF+RRC | 〜13,370 | 0.5〜9.0 |
56Fe | 90(*2) | 〜 72 | AVF+RRC | 〜 2,100 | 4.9〜29.4 |
E5Aコースで、空気中照射用に使えるビームは上表の通りです。
・エネルギーの単位[MeV/u] は、核子当たりのエネルギーです。
・実験施設構成によって、
利用料金 が異なります。
・最大飛程[μm]は、照射試料(材質 Siを仮定)の表面からイオンが到達する
最大深さです。詳しくは下図をご覧ください。
・(*1) 136Xe 11MeV/u は、供給可能ですが、空気中のエネルギーが低いので
照射に注意が必要です。詳しくは当チームへご相談ください。
・(*2) 生物照射用のビームですが、半導体照射にも利用可能です。
C は年間3〜4回の供給がありますが、Ne, Fe は供給回数が不定期です。
更に半導体用の利用実績がまだ無い(2023現在)ので、
希望の場合は、当チームでビームスタディをしてから利用可能となります。
【上表とグラフの説明】例えば Ar ビーム (緑線) の場合
・加速器から供給される真空中エネルギー(□印)は 95 MeV/u です。
・それを空気中に取り出し、標準的な照射位置(■印)で 約 83 MeV/u となります。
・この時、グラフ縦軸「Si材料中の飛程(Range)」から、約 3700 μm (3.7 mm)
の深さまで Ar ビームが到達可能な事が分かります。
これが 理研の Ar ビームで試験可能な 最大深さです。
・この時のグラフ横軸が「Si試料表面での」LET値で、約 2.2 [MeV/(mg/cm2)]
これが 理研の Ar ビームで試験可能な 最小LET値です。
・そして、後述のエネルギー減衰板(厚さ可変)を Si試料の前面に挿入して、
Ar ビームのエネルギーを 83 MeV/u より低い方向に調整して行くと、
横軸の値、即ち「減衰板通過後 の Si試料表面での」LET値は、
Ar ビームの最大LET値 = 18.7 [MeV/(mg/cm2)] まで増加して行きます。
このようにして、Ar の 最小LET〜最大LET までの試験を行う事が可能です。
実際の照射サンプルでは、Si材の表面がモールド材等で覆われている場合や、
Si材の表面から深い位置に 感応層 がある場合があります。
その場合、ビームがこれらの物質を余計に通過する分だけ更にエネルギーが低下するので、
試験可能な 最小LET値 は、上記例より大きな値からしか試験できません。
実際は、照射位置での最大エネルギー点(■印)が、Arの曲線に沿って低エネルギー方向へ移動します。
その移動量はおおよそ、Mold材の厚さを Si材に換算した厚さ(*3) だけ、縦軸:Si材中のRange
を低下させます。
しかしながら、Arビームの最大LET値は、ビーム核種 vs 照射物質 の組合せで決まる 固有の値
(例: Ar vs Si なら、必ず maxLET = 18.7) ですので、エネルギー減衰板の厚さ調整で maxLET
までの試験が可能です。但し、その感応層深さまで Arビームが到達可能 (Rangeが十分ある)
場合に限ります。
(*3) Mold材の厚さを Si材厚さに《ラフに換算》するには…
Si材換算厚 〜 Mold材厚 x ρ(Mold材) / ρ(Si材) ρ() : 材質の密度
で求まります。例えば Mold材 = Epoxy 1000μm の場合、
Si材換算厚 〜 1000 x ρ(Epoxy)=1.85 / ρ(Si)=2.32 〜 797 μm
がラフな近似値です。尚この近似は、Mold材が比較的薄くビームエネルギーが高い場合にのみ有効です。
正確に計算するには
SRIMfit計算
が必要となります。
上記 Ar 83MeV/u の場合
srEnew_eq_Th( '40Ar_Epoxy', '40Ar_Si', 83 MeV/u, 1000 μm) = 966 μm
が、正しい値 となります。
【上グラフの作り方】
● 上側:宇宙線 Flux分布 は、
CREME96 コードで計算。
詳しくは
素人用 CREME96 HowToメモ
Excelシート1
シート2 を参照下さい。
● 下側:重イオンビームの
E, LET, Range プロット
Excelシート
の詳細は、
SRIMfit E5例題集の紹介 を参照。
「空気中照射」ビームコース E5A
E5Aビームコースには、試料上でほぼ一様な線量分布を得るために、 水平・垂直方向にビームを偏向する2基の交流電磁石(Wobbler電磁石)と 多重散乱でビームスポットを広げるための 散乱膜(Au箔等) があります。 その下流 約4m に、試料照射位置があります。
ビームは、真空切り窓(Kapton膜)から空気中に取り出されます。 その後、ビームフラックス検出器(Plasticシンチレータ等)や、 ビームエネルギー減衰板セット(Al板)を通過後に、回転ステージ上に設置した試料へ照射されます。 また照射試料と同じ位置に、エネルギー検出器(Si半導体等)を設置し、ビームのエネルギーを実測します。 これらの検出器やステージは、ビーム軸方向にスライド可能です。
ビームコース架台には、棚が3段あり、ここに利用者の計測機器を設置してください。 照射物の設置位置の確認用に レーザー墨出し器 が数台設置されています。 照射中は照射室は入室禁止です。利用者のオンライン測定用計測機器は イーサネット(Closed LAN) または 同軸信号線(BNC) 経由で遠隔制御してください。
利用者用の 照射用架台は3セットあり ビームライン常設架台から分離可能です。 数社が連続して照射する場合でも、各社ごとに架台を占有できます。
照射試料 の 取付け
照射試料(デバイス照射ボード)は、回転ステージから簡単に取り外せます。
回転ステージから取り外した 十字架型の治具 に 照射ボードを固定 するには、
絶縁ブッシュネジを利用してください。固定位置は自由に調整可能です。
照射ボードの最大サイズは、約 □30cm x 30 cm です。
ビーム軸上に照射デバイスの中心が位置するように固定してください。
また、ボードを回転させる場合は、信号ケーブルの取り回し、及び回転したボードの干渉
にも注意してください。