The BAQ/Data Acquisition/DAQ System/Babarl/Abstract

BabarlDAQでは複数台のパーソナルコンピュータ(PC)とオペレーティングシステム(OS)にRTLinux、CAMAC Create ControllerにはKinetic 3922 + 2915 PCIInterface to 3922もしくは東陽テクニカCC/7700 + CC/PCIを採用してます。 RTLinuxはLinuxのリアルタイムOS版で、GNU General Public Licenseに基づいて配布されており、無償で利用することができます。 BabarlDAQは各イベントをACCではなくPCで処理します。イベント処理にRTLinuxを使用することで、BabarlDAQのパフォーマンスは以前のシステムと同程度に達することができました。

BabarlDAQにはLinux上で動作する使いやすいオンライン解析ソフトウェアのAnapawを含んでいます。 AnapawはCERN Program Libraryを使用したPAWベースのソフトウェアで、以前のシステムで使用されていたAnalysと互換性を持っています。 Anapawは同じユーザーインターフェイスでオンライン、オフライン解析を行なうことができます。オンライン解析時、AnapawはBabarlDAQの構成要素の1つであるAnalyzerからデータを受け取り、オフライン解析時はファイルからデータを読み出すことができます。

このように、BabarlDAQはとても費用効率が良く、また利用者は以前のシステムから容易に移行が可能です。

BabarlDAQの主な構成要素はCollector, Driver, Transfer,Database, Controller, Recorder, Analyzerです。 CollectoとDriver, Transferを除いて、それぞれの構成要素は複数台のPC上に分散可能で、それぞれはお互いにイーサネットを通じて通信します。 Databaseはステータスデータ(ラン情報、ブロックデータ、スケーラデータなど)を管理し、他の構成要素にこれらを提供します。 Controllerは唯一ユーザーインターフェイスを持つ構成要素で、利用者はこのControllerを通じてBabarlDAQを制御します。 RecorderはTransferからローデータを受け取り、ハードディスクもしくは磁気テープに保存します。 AnalyzerはAnapawやステータスモニタなどのオンラインソフトウェアのフロントエンドで、Databaseからブロックデータを受け取ります。 Collectorはデータ収集開始時にDriverを組み込み、Transferを実行させます。 DriverはCAMACからデータを収集し、共有メモリ領域のバッファに貯めます。 Transferは共有メモリを監視しており、バッファがフルになった時にデータをRecorderとDatabaseに転送します。このようにDriverとTransferはお互いに共有メモリを通じて交信し、CollectorはDriverとTransferのフロントエンドであるため、これらの構成要素は同一のコンピュータ内に存在する必要があります。

DriverはRTLinuxの周期的タスクを使用してCAMAC LAM信号を50μs間隔でチェックします。標準のLinuxの周期的タスクにおいて、タスクを始動させるのに600μs以上必要で、それは簡単に20ms以上の遅延が生じますが、RTLinux周期的タスクでの遅延は35μs以内です。また、共有メモリに2つのバッファを用意しているため、Transferがバッファデータにアクセスしている間でもDriverはCAMACからデータを得ることができます。

RTLinux上で動作するKinetic 2915 PCI Interface to 3922のデバイスドライバも開発しました。 RTLinuxを使用しているので、CAMAC制御のパフォーマンスは他のプロセスの影響を受けません。 single-actionにおいてno-data-transferモードの反応時間は8.5μsで、read-actionとwrite-actionモードでは11.0μsでした。 Kinetic 3922 + 2915のactionモードの1つであるBlock-read-actionモードでは、1度crate address, station number, subaddress, function, transfer-countを2915 CNAFレジスタにセットすれば、2915 FIFOレジスタを読み出す度に自動的に新しいデータがtransfer-countだけセットされます。このモードはLeCroy FERAやFERA互換、メモリー、Phillipsのなどのシーケンシャルに読み出しができるモジュールに有効です。 16ワード読み出すのにsingle-actionモードでは175μs$必要だすが、このモードでは58.4μsですみます。

BabarlDAQはすでにRIKEN projectile fragment separator (RIPS)における原子核物理学実験に導入されています。 1イベントサイズが80～90ワードで、イベントレートが0.2kcps～1.8kcpsの典型的なRIPSにおける実験で、以前のシステムと同定度のパフォーマンスを得られました。特筆すべき点は、高いレートで長期間の実験にもかかわず保存されたデータに1つもエラーがなかったことです。

Last Update: 2005/4/7
Hidetada Baba
baba ＠ rarfaxp.riken.jp