RIKEN/RIBF施設共用促進事業

安価・簡易な「回転体の」RIイメージング ( GIRO法 )

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GIRO (Gamma-ray Inspection of Rotating Object) 法は、 少数の検出器で 回転体の RIイメージング を行う手法です。[特6278330JP]
例えば 医療用 PET(Positron Emission Tomograpy:陽電子放射断層撮影)装置の場合、 静止している患者(観測対象物)を多数の放射線検出器で 360度取り囲むことで、撮りたい断層平面内に放出される放射線を一度に観測します。
ところで、対象物を「回転体に限れば」検出器が少なくて済ます。 GIRO装置の場合は、左右1対の検出器を平行移動させる往復スライドメカだけで、 PET装置と同等の情報量を測定可能です。 このGIRO法を、例えばベアリングのような「回転する機械部品の摩耗のオンライン検査」 などに応用する事を目標として開発を進めています。

GIRO装置 開発の歩み

GIRO装置はまだ開発途上ですが、 ご興味のある方は トライアル利用で「お試し」して頂けるとありがたいです。 装置の性能など詳しくは 【GIRO法とは】 や、【紹介文献】 をご覧ください。


GIRO ver.1: 原理実証機

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第1号機(上図)では、回転する機械部品に見立てた回転台を用いて原理実証をしました。 GIROは構造が簡単なので装置サイズはスケーラブルです。 回転台の上に Na-22 β+崩壊線源を3つ置き(下図)、 そのRIイメージング画像の取得を試みました。回転台の回転速度は 150 rpm です。 毎分 2 mm ステップで 検出器を平行移動させ、測定時間は 24時間!! です。 GIRO装置は検出器が少ないぶん長い測定時間が必要です。

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GIRO装置で測定される1次データ (サイノグラム) に PET装置と同じ画像解析アルゴリズム (逆投影法) を施すことで、 再構成画像 (RIイメージング画像) を取得することができます。 RIで見た画像では、放射性物質の位置だけでなく放射線強度の評価も可能です。


GIRO ver.2: 3次元画像に挑戦

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第2号機では、左右に上下2段の検出器を配置しで3次元(正確には3層)のRI画像 の取得を試みました。高さ違いの3層には、点状線源の他に RIで文字を描いた 面状線源も配置しました。 得られたサイノグラムデータはかなり複雑ですが、画像再構成の段階で 検出器の組合せを選別することで3層の分離画像が得られました。


GIRO ver.3: PET + SPECT に挑戦

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第3号機では、タングステン製のスリットを強化しました。 γ線の散乱が減り位置分解能が向上したので、PETモードとSPECTモードの同時計測 が可能となりました。 γ線を同時に2個放出するRI核(β+崩壊核:PETモード)だけでなく、 γ線を1個づつ放出する一般的なRI核(SPECTモード)のイメージングも可能と思われます。

GIRO ver.4(mini): 可搬型小型化に挑戦

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第4号機として小型のデモ機を開発中です。 摩耗試験を必要としている装置の現場へ持って行けるような、 スライドメカ、及び検出器と電子回路の小型化を進めています。

GIRO法 応用の可能性

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GIRO法は、例えば従来のPET法と比べると安価で簡易なRIイメージング手法です。 しかしながら、測定対象は回転物に限られ、測定時間も長時間必要です。
一方GIRO装置は構造が単純なので前述の様に、 装置サイズがスケーラブルで、3次元化、SPECT同時測定などの 機能拡張にも比較的容易に対応可能です。 原理的には超高速回転(数万rpm)の対象でもイメージング可能でしょう。
GIRO法は医療用には不向きですが、 RI分布がゆっくり変化する対象(例:摩耗検査)などに適しているでしょう。 「回転するモノの内部をRIトレーサーで探りたい!」というご要望がございましたら 是非お声かけ頂けたら幸甚です。

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【注】 GIRO法を用いる観察対象によっては 「非密封 RI 取り扱い施設」が必要な場合があります。 詳しくは産業チームへご相談ください。