ワークショップのまとめと感想

放射線研 谷田聖

 

この度のワークショップは参加者の皆様のおかげで大変活発な議論が交わされ、まずは成功だったと思っている。参加者の皆様にまずは感謝を申し上げたい。

 

議論が活発すぎて最初のトークで30分予定をオーバーしてしまうなど、主催者としては嬉しい悲鳴をあげたくなるようなこともあったが、なんとか無事に終了した。このようにぎりぎりの進行になってしまった背景には、トークを詰め込み過ぎてしまったことがあり、反省している。もし次回があるなら、今度は各トークにもっとゆったりと時間を取って、議論が切り捨てられないようにしたい。

 

ワークショップの内容を振り返ると、まず最初のトークで村上氏(立教大)がこれからの検出器/電子回路開発における課題を提示した。必要な技術レベルは常に最先端のものが求められるにもかかわらず、生産量が少ないため、経済的な理由で技術が廃れつつある現状を指摘し、既に危機的な状況にあると警鐘を鳴らした。それに対し、技術を継承させたいなら、なぜよい教科書を作って後継者を増やさないのか、という疑問が寄せられていた。

 

また、このままアナログ回路を用いた技術が廃れていくなら、前段回路で全てをデジタル化することにし、アナログ技術はここで必要になるもの以外は全て捨てることにするしかないのではないか、という意見もあった。このような傾向は既に非常に沢山のチャンネルからの信号を処理しなくてはならない高エネルギー巨大実験で見られるが、この潮流にのまれるか、腰を据えて別の道を模索するかの決断を迫られていると言えよう。

 

前段で全てデジタル化する、という構想を推し進めたものが、次の馬場氏(重イオン研)の「ユビキタス検出器の構想」で、多くの人が面白いと期待を寄せていた。インターフェイスを共通化して、module化できるようにしておけば、非常に応用範囲が広いのではないかと思われる。そのためにも、共通規格をまず作ることが重要だと感じた。

 

逆に、アナログパルスを光ファイバーを通じてノイズなしで伝送する技術(放射線研熊谷氏のトーク)についても面白い、という声が多く寄せられた。アナログ信号をそのまま見ることの重要性を訴える人は多く、そのために役立つ技術として有望だと思われる。

 

播磨からは、Photon counting型が望ましいにも関わらず、カウントレートのあまりの高さから、積分型の検出器を使わざるを得ない現状についての話があった(JASRI豊川氏)。宇宙物理からもいくつかトークがあったが、また違った事情があり、共通点、相違点についてはかなり相互理解が進んだと思う。今後はさらに議論を進め、具体的な形にして行きたいと思っている。そのためにもまたこのようなワークショップを開きたいと考えており、次回は播磨研で行うことを検討している。