グェン・ディン・ダン

オープニングの言葉

 

個展「私の中の東と西」

H.A.C. Gallery20071026

 

 

ご来場の皆様、

 

 

 本日は私の個展のオープニングパーティーに多くの皆様にご来場いただきましたことを心より感謝申し上げます。

 

 私がこのH.A.C.ギャラリーで個展を開催できたのは、友人であるベンジャミン・リー氏のお陰であります。リー氏は昨年の9月にこのギャラリーで展覧会を開催し、私はそのオープニングの席で、光栄にも高円宮妃殿下にお会いすることができました。その際に、リー氏が私の“Autobiography”(自伝)という3連作の作品が揃って展示されたのを一度も見たことがないと触れたことに、高円宮妃殿下が「このギャラリーはその展示に相応しい場所だと思います」とおっしゃられました。私はその言葉に大変感銘を受け、ポストカードにもご紹介した作品と合わせ、ここで展示することを決めたのです。ところが、ギャラリーの入口は130号という大きさの作品を搬入するには狭く、その結果、一度作品を木枠から取り外して解体し、運び入れまた組み立てるという作業を、昨日の午後に行ないようやく開催することができたのです。

 

 その3連作の中の“The Exit”(出口)という作品でモデルをしてくださった佐藤玲子樣にこの場をかりて厚く御礼申し上げます。佐藤樣は私と息子のピアノの先生で、本日もここにご来場頂いております。そのチャーミングな魅力が、この作品が今年の9月に損保ジャパン美術財団賞を受賞したことに貢献していることは疑う余地もありません。

 

 本展の開催にあったては、ギャラリーの佐野様と見吉様、そしてハートアートコミュニケーション、また私の友人で展覧会のサポートをしてくれた畠理弘氏にも心より謝辞を申し上げます。そして、私と私の作品に常に愛情をもって応援してくれる妻にも大変感謝しております。

 

 さて、展覧会のタイトルであります“East and West in Me”(私の中の東と西)について少しご説明したいと思います。私はこれまでの経験の中、様々な場面において文化の違いを学び、それによって私自身の芸術のスタイルが養われました。“The firefly”(蛍)という作品がありますが、これは蛍となって帰ってくるという日本の神風特攻隊の話を読んだことがきっかけで制作した作品です。このストーリーは、私に美しいロシアの歌 “Zhuravli ()を思い出せます。最近になってこの歌の由来が日本であることを知りました。この詩の作者R.ガムザトフ氏は広島記念館を訪れた時、幼い少女から折り鶴を手渡されたそうです。彼は数ヶ月経った後もそのことを忘れることが出来ず、有名な冒頭で知られるこの詩を作りました。

 

時々私は兵士たちのことを思う

血まみれの戦場から帰ることのなかった彼らのことを

兵士たちはいつか、わが大地で眠りについたのではなく

白い鶴に姿を変えたのだ、と

 

私がまだ学生だった30年前、モスクワでこの詩に出会いました。今夜は、私がアーティストとして、多くの成長を様々な文化の中から学ぶことができたということに感謝の気持ちを込めて、皆様にこの詩を贈りたいと思います。特に日本文化においては、私やR.ガムザトフ氏に限らず、数多くのフランス印象派画家をはじめ、現代人や次世代の人々へも影響を与え続けてゆくことでしょう。