下村文部科学大臣との懇談メモ(2015年1月26日)
  •                              望月優子(理研)

  • 下村文科大臣と懇談し、世界銀行の組織改革を参考にアカデミアでの360度人事評価(情報収集)の効果について発言をした。その後すぐ、大臣の指示により、文科省の室長補佐の方が望月の提案を詳しく聞き取りに来て下さった。名刺交換し今後につながっている。

  • ・10名の受賞者中、事前に懇談できる2名のなかに選ばれていた。
  • ・懇談内容は研究内容で2分ほどとの事前の連絡あり。
  • ・その場で大臣より「現場からの要望があればなんでもいいから言ってほしい」とのご発言あり。
  • ・そのため、自己紹介の後(懇談の場では大臣、副大臣、政務官、事務官の方々含め20名ほどの中で紅一点の状況であったこともあり)研究説明は少々で切り上げて以下の発言をした。

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    女性の幹部職割合向上と研究現場の生産性・組織の活力向上のための「下村大臣の一挙両得の策」があります。それは大学や研究機関にも360度人事評価(情報収集)を導入すること。これは世界銀行の元副総裁の西水美恵子さんが導入して既に世銀の組織改革に成功したやり方です。

  • 以下、要点:
    「360度人事評価(情報収集)」で期待できること:
    1)女性の幹部職割合の向上
    女性の場合、上司からの評価は同僚・部下からの評価と全く異なることが多いことが既に明らかになっているので360度評価(情報収集)が必要。これで女性が「無理なく」幹部クラスや指導的立場(教授・准教授)になる割合が増える。
  • 2)研究現場での生産性・組織活力の向上
    優秀な女性がパワハラに会う傾向が高い。私が聞いたところ、大学院生から副学長や学長を務められるような先生方までパワハラにあっている。日本では、起きたパワハラへの対応と被害からの回復で莫大なエネルギーと時間・労力が無駄になっている(ここで正面の副大臣と政務官が大きくうなずいて下さった)。360度評価(情報収集)の導入によって研究者コミュニティからパワハラがなくなれば(少なくなれば)、研究現場での生産性と組織活力は明らかに向上すると自分は確信している。
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  • ・下村大臣には、懇談中に理研の望月という名前を覚えて(皆の前で言及して)いただきました。それほどあることではないと思えるので、自分で言うのも変ですが、あえて難しいことを言及しても印象は良かったのだと思います。
  • ・最後に大臣から握手を求められ皆が握手しました。わたくしの前におられた受賞者の方と同じく「頑張ってください」と定型的に大臣からお声がけされるかと思ったら、意外でしたが「これまで相当にパワハラにあいましたか?」と聞かれ、とっさに「はい、あいました」と答えました。(思い返せば大学院生時代から現在までいろいろ経験したものです。『勇気を持って流れを変えよう(2005)』『過度なストレスから心と身体の健康を守ってよい研究を〜知らないと損する10の知恵〜(2014)』
  • ・懇談後、私が文科省内(政策研究所所長室)に留まっている間に、文科省の人事局の室長補佐の方が大臣からの指示があったとのことで、さらに詳しい説明を聞きにきてくださいました。約30分、しっかりご説明しました。(パワハラだけでなくアカデミアでのセクハラも同様。360度評価(情報収集)は大学では理事から助教まで必要と強調。)
  • ・世銀の360度人事評価(情報収集)の資料として、世銀元副総裁の西水美恵子氏執筆の毎日新聞の3日分のコラム記事(西水氏のFacebookからダウンロード可能)をたまたま持参していたので急遽コピーして頂きました。ご説明した文科省室長補佐、同席の政策研企画課長のみならず、総務研究官他の方々に資料として配布されたようです。
  • ・世銀では「優秀な女性を選ぶのではない。優秀な人材を男女の差別なく選ぶこと。それが女性の進出を促進する結果をもたらす」とされ、実際そうなったそうです。そのために徹底的な360度評価(情報収集)の取り組みがなされました(上述の毎日新聞記事参照;西水氏のFacebookからダウンロード可能)。大学・研究機関等ではすべての真似は難しいかもしれないが、エッセンスとできるところを取り入れて改善していけば良い。
  • ・360度評価(情報収集)の案は、学会や周囲の複数の男性研究者からも賛意がありました。
  • ・文科省政策研究所 総務研究官から「『優秀な人材を男女の差別なく選ぶ』との世銀のポリシーや、このための360度評価(情報収集)等の取組は、これまでの単なる「不利な環境に置かれた女性を支援する」観点からのプログラムよりも質的に進化・成熟した考え方のように思えます」とのご感想を受けました。
  • ・一研究者の一回の発言がすぐ具体的政策に結びつくわけではないでしょうし、発言・主張すればたたいてくる人も増えるでしょう。しかしながらこれは長い経験からくる確信に基づいたもので、これからも機会あるたびに堂々と発言していこうと思います。

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    その他関連して思うこと:

  • ・研究者コミュニティにおける指導的地位にある女性の割合30%(=世界標準)とする目標については既に日本学術会議が20年以上前から提言してきていること。提言があっても日本は30年来、変わっていない。例えば現在、日本天文学会では女性の教授・准教授割合は正会員のたった1%である。日本が先進国で「最低」な現状を打破するためには数値目標はもちろん、一番最初の過渡期はクォータ制もやむを得ないと個人的には思っている。但し、「女性であれば誰でもよい」とならないようにすることが最も大切である。
  • ・「ポジションは人を育てる」
  • ・研究分野全体で女性教授・准教授割合15%が既に達成されているとするのでなく、これからは(物理・化学など)「個々の分野での」15%の達成、さらには「2030」:2020年に30%になるよう促していくことが必要に思う。
  • ・女性は補助的職についていることが多いので、職員の女性割合を提示するなら職位別に明示しないと意味がない。(例えば、研究補助のアルバイトやパートタイマーが女性研究者として(上乗せして)入っているケースもよくみられる)

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